「玉石混交の子どもだから、褒めて育てる」

近所のおじさんが子どもを8人集めて徒競走をさせました。「ヨーイドン!」、いつもはビリの子が懸命に走って後ろから2番目でゴールインしました。そして、体力に自信のある子はキョロキョロ脇見をしながら走って一番になりました。さて、どちらの子を褒めるべきでしょうか? ほとんどどの大人は「競争だから!」と一番の子に賞品を渡すのでしょう。でもこの近所のおじさんは、迷うことなく後ろから2番目の子に皆の前で賞品を渡しました。渡された子は「何で一着でもない僕なのだろうか?」と不思議に思い、一番の子は「なぜ僕じゃないのか?」と面白くありません。くだんのおじさんは、一着の子を呼んだ二人だけの対話で「君はおじさんが、何故彼に賞品をあげたか判るかい?彼の今日の走りをどう思う!」と問いかけました。「偉いなぁ!いつもビリなのにとっても頑張ったのでビックリした。あっそうかそういうことなのか・・・」と一着の子。「で、君は一生懸命走ったの?」「だってあの8人だったら適当に走っても一番になるに決まっているから・・・」

学校でも塾でもスポーツクラブでも、そして家庭でさえ、今の子どもの居場所では、そのプロセスが全て無視されて、他人との比較で結果が上の順番なら褒められ、下位だとダメ扱いされてしまいます。例え話が悪くて恐縮なのですが、この話は実話でして一着の子は私の息子でした・・・。

ボーイスカウトでは「絶対評価教育」をとても大切にしています。他の人との比較で良いとか悪いとか評価する「相対評価」ではなく、その子の能力の中でどれだけ努力をしたか?を評価する教育法です。ボーイスカウト教育の基本は「群」の中の「個」を大切に、つまり「隊長(指導者)と一人のスカウトの関係!」の集積体なのです。

知力、体力、応用力が正三角形の子どもは稀です。それぞれの「力」が玉石混交なのです。でも、どんな子どもでも一つや二つの玉や磨けば玉になる石を持っています。そこを見つけて努力をさせ褒めてあげるのです。

50年間もボーイスカウトの指導者を続けた尊敬する先輩で教員が本業であった方がおられます。その方が後輩に熱く語られました。『今、学校教育は駄目でしょう? 私も学校教育の現場にいましたが、「落ちコボレ」を絶対作りませんでした。一人学校へ来なければ授業を自習にしてでも迎えに行きました。「落ちコボレ」を作ったら学校教育は失敗だと思っています。優等生がいたって「落ちコボレ」ができたら駄目だ!義務教育として皆幸せにならなくちゃいけない。平等っていうのはそういうことじゃないですか? 優等生を作った!部活動で1番にさせた!と言ってそれを誇らしげにしているよりも、「落ちコボレ」を1人でも少なくすることの方が大事です。だからこのボーイスカウトの教育法やその精神を関係者は誇りに思わなくてはいけない!』と・・・。

― カブスカウトの「やくそく」 -

ぼく(わたくし)はまじめにしっかりやります

カブ隊のさだめを守ります

カブ隊の「さだめ」

1.カブスカウトはすなおであります

2.カブスカウトは自分のことを自分でします

3.カブスカウトはたがいに助けあいます

4.カブスカウトはおさないものをいたわります

5.カブスカウトはすすんでよいことをします

■小学校3年生から5年生のカブスカウトは自分自身の心に約束をしています!

日貿易出版社発行 森屋啓著「地域力だ!ボーイスカウト」より

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