違う年齢の小グループが子どもを育てる

 

日曜日の昼下がり、タンポポの咲く団の野営場広場で中学3年生の班長を中心に記録、会計、安全、備品、環境係などの任務を分担するスカウトが車座になって班会議を開いています。班長の横には班の名誉を象徴する班旗が立て掛けてあります。班のメンバーは小学6年生から中学3年生まで年齢の異なる8人の子どもたちです。この日の議題は、2週間後に迫った隊キャンプの目的と班員の任務について。ほかにも年間プログラムの来月の予定や各自の進級問題も話し合わなければなりません。課題は山積み。中3の班長はテキパキと議事を進めていきたいのですが、下のクラスのカブ隊から上進して間もない小学6年生は勝手が判らずにドギマギしています。すると、それを見かねた中2次長が、隣に座って小声で班長の言うことを丁寧に解説してあげはじめました・・・。

勿論この車座の中には指導者の姿はなく離れたところから慈愛の眼でそっと見守っています・・・。

このようにボーイスカウトでは、異年齢で構成する縦社会の小グループの班を単位として、子どもの自発活動を促す仕組みを教育システムの柱に据えています。この班の中で子ども同士が協力し、励まし合いながら班の目標を達成するのです。「行うことによって学ぶ」ことで自己の「進歩課目」を習得していく過程を通して、リーダーシップやフォローシップを学び、子ども同士の友情を育んでいきます。指導者の任務はあくまでもその手助けであり協力者なのです。

私の団のボーイスカウト隊では、4つの班が競い合いながら年間プログラムを消化していきますが、一見して「団体教育」と思われがちな仕組みの中で、隊長は30人のスカウトの一人一人の資質、性格、家庭環境などを把握していて、「個々のスカウトが自身の能力に対してどれだけ努力をしているか?どれだけ進歩を遂げているか?」に常に注目しています。「群」の中の「個」を大切に、つまり「隊長と一人のスカウトの関係の集積体」であるゆえんがここにあります。

この「班制教育」と「進歩制度」がボーイスカウト教育の2大制度であります。

しかし誠に残念ながら、世の中の殆どの人は、ボーイスカウトが「制服を着て、募金をしたり、キャンプをしている」ぐらいにしか認識いただいていないのが現状では?

「体系的な教育システムで地域の青少年を長期的に教育しているボランティア団体」という肝心な内容をぜひお伝えしたいものです。

この残念な現状について、関係者の一人として努力不足を猛省することしきりの今日この頃です・・・。

― ボーイスカウト教育の「基本方針」 -

ちかいとおきての実践を基盤とし、ベーデン・パウエルの提唱する班制教育と、各種の進歩制度と野外活動を、幼年期より青年期にわたる各年齢層に適応するようにビーバースカウト、カブスカウト、ボーイスカウト、ベンチャースカウト及びローバースカウトに分け、成人指導者の協力によってそれぞれに即し、しかも一貫したプログラムに基づいて教育することを基本方針とする。  (公益財団法人)ボーイスカウト日本連盟が定める「教育規程」より抜粋

 

 

日貿易出版社発行 森屋啓著「地域力だ!ボーイスカウト」より

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